入国審査をすませるとそこは目的地の空港ではなかった(後編)
Here is Manchester.
驚いたことに,私はバーミンガム空港行きの飛行機に乗ったが,着いた空港はマンチェスター空港であった. 何か超常的なことが起きたのだろうか・・・・.
バゲッジクレームの係員に困っていることを伝えると,
「何言ってるのか,わけわからん.とりあえず,SASのカウンターに言って話を聞いてみろ」
と言われる.
そのまえにイギリスの現地スタッフに電話し,私の状況を伝えなければならない. おそらく,現地の方が私をバーミンガム空港に迎えに来ているはずだが,私がいないことに気付けば,何かしら心配をかけると思ったからだ. とりあえず,私は無事だが,なぜかマンチェスターにいるということを現地のスタッフに伝える.
「なんでそんなことになっとる?どういうこっちゃ?飛行機を乗り間違えることはないやろ?」
僕もないと思う. でも現に私はマンチェスターにいた.
「よくわかんないんです・・とりあえずSASのカウンターに行ってみます.」
と伝えて,電話を切った. SASのカウンターには,やさしげな地上スタッフの婦人が佇んでいた. 私は,なけなしの英語で自分の現状を伝えた.
「・・・・・あなた英語わかる?アナウンス聞いてた?」
「寝てた.」
(心の声.飛行機のアナウンスなんてノイズだらけだし,声くぐもってるしわかりにくいやん普通)
それが何の問題なんだと思いながら,そう私は返答した.
婦人はお説教っぽく私に言った.
「あなたが乗ってた飛行機は搭乗直前に目的地が変わったのよ」
「はい?」
「あなたが乗ってた飛行機は搭乗直前に,マンチェスター経由,バーミンガム行きに変わったの.だから今ごろ,飛行機がバーミンガムに着いてるはずよ」
「知らんがな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ポケットのiPhoneが振動する.その状況下で現地のMさんから電話がかかってきた.
「どうなっとる?」
「なんか飛行機の行き先が変わって,私間違って飛行機降りちゃったみたいです.」
「はーーーーーーーー?行き先が突然変わる?そんなこと普通あるわけないやろ?聞いたことないぞ」
「でも,現に今私,マンチェスターにいますし・・・・私も聞いたことないですよ・・・・」
その状況下で,婦人が僕に尋ねる.
「その電話の向こうの人,英語できる?イギリスの人?」
「日本人だけど,バーミンガムで働いてる人.英語できるよ」
と答えると,婦人は私に電話を寄越せと言う.なんか,色々逆らうのに疲れてきたので,はいどうぞ,と携帯を渡すと開口一番.
「この子,英語わかってないけど大丈夫?」
とか言ってやがる!!!まさに「ファッキンジャップくらいわかるよ,バカヤロウ!!!」な瞬間であった.優しいのか,なんだかよくわからない婦人はバーミンガムまでの電車をルート検索して,プリントアウトし,渡してくれた.
さらにもう一つ大きな問題があった. 私のスーツケースである. 私のスーツケースは,けなげにバーミンガム空港で途中下車してしまった持ち主を待っていたのだ. 同僚いわく,まさかの「Lost Passenger」・・・・. その後,実は,現地のネイティブのスタッフが空港まで直接行き,状況,搭乗者の名前やカバンの預かり番号等をバゲッジクレームに説明して,私のスーツケースを空港から取ってきて,オフィスで保管してくれていたのだった・・・・・.
次は電車で
イギリスは世界に先駆けて鉄道を敷設した国である. ゆえに鉄道網は発達しており,都市間は大方鉄道で移動できるらしい. しかし・・・・・. ほぼ初めての国で鉄道で,何の下調べもせずに移動するのはほぼ無理ゲーである. 私は,婦人にもらったプリントアウトされたルート表を握りしめ,一路バーミンガムに向けて,電車に飛び乗ったのである.
しかもマンチェスターで乗り換えがあり,マンチェスターの駅は巨大. 確かプラットホームが10以上あったことを覚えている. 鉄道が発達していない地域から来た人だと面食らってしまうだろうなぁと思いながら,紙に指示された通りの電車にのる. 電車は座席もそこそこ快適でバーミンガムまで2時間程度でたどり着けるはずであった・・・・・.
またトラブルですか
バーミンガムまで残り30分程度というところで,駅について社内アナウンスが流れる. アナウンスが聞き取りづらいので,よくわからないが,車両の故障で少し時間がかかる,空港に向かう人は次の電車に乗っていくといいよという趣旨のようだ. スーツケースを持った何人かの乗客が席を立ち,電車を降りていく. 私は,こんなどこかわからないところで乗り換えとか勘弁してくれ・・・・と祈るような思いで電車の復旧を待った. しばらくすると,再度アナウンスが.意訳すると.
「もうだめぽ」
乗客全員が一斉に席を立つ. えぇぇぇぇぇ・・・・・辞めて・・・・・もう辞めて・・・・・. 停車中の駅はプラットホームが6つほどある駅である程度大きかった. 方向がさっぱりわからないので,駅をあるいている二人組の駅員さんに
「バーミンガムまで行きたいのですが,どの電車に乗ればいいのですか?」
と中学生の例文のような聞き方をしてみると,
「I don’t know.」
と返され,置いていかれる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・.
ちょうどそのとき.口汚い英語で「なんで電車遅れるねん,アホか,ゴルァ」と言いながら,電車に乗ろうとする黒人のお兄さんを発見した. 身なりはキレイだったので,意を決して,再度駅員と同じ質問をすると,
「オレもバーミンガムに行くところだ,この電車に乗ればつくぜ,乗れ」
と言われる.もう,信じるしかないので,すんごいお礼をいって電車に飛び乗る. そこから,電車はスムーズにバーミンガムにたどり着いた. 駅には,現地のスタッフの方が私を待ってくださっていた・・・・・・・. 結局,私は,予定では9時着であったのに,15時にバーミンガムのオフィスに到着した.
私は,オフィスに入るなり,現地のスタッフたちに
“Mr.Birmingham!!! WelCome!!!!!!”
と歓迎されたのであった・・・・・・・・・・・.
教訓
- 飛行機の行き先は突然変わる.どこの空港か降りるときに確認しよう.
- イギリス人には親切な人とそうでない人がいる(情報量はゼロ).
- 「ファッキンジャップくらいわかるよ,バカヤロウ!!!」
その後,ロンドンから成田へ帰るフライトは,フランクフルト経由だった. ヒースロー空港からフランクフルト空港につうたとき,
「ここはフランクフルト空港ですよね?」
と私が確認したのは言うまでもない・・・・・・・・・・・・・・・・・.