SONYをふたつの視点から。
ソニーに関する本を読んだ.ふたつの視点から没落していくソニーを読むことができた.
一冊目の辻井氏の本は,彼視点なので,当然,公平性はないし,西田氏の本は,久多良木氏への愛が深すぎて不公平感が否めないが,まぁ,本なんてバイアスかかって当たり前なのでよしとしよう.
辻井さんの本は,彼自身の八面六臂の活躍と最後は背中から打たれてソニーを辞めてしまうまでの流れを彼のソニーへの愛を中心にかかれている.
また,ゲームの方は,帝王任天堂に挑むソニーのエンジニアたちの活躍と新しいビジネスモデル,PS3の失敗とその後のソニーの没落が描かれる.
おもしろいのは,PSXとすご録という二つのハードディスクレコーダという商品に関するソニーの二つの部署からの視点が,これらの本にそれぞれ描かれている点だ.
PSXというゲーム機という財産を使って,新しい体験を売り込む久多良木チームの猪突と,ソニーのレコーダを統括しなければならない辻井氏側の製品ラインナップを考えろというある意味経営視点の行動.
これら二つを連続して読むと,それぞれの視点がそれぞれ描かれているのがおもしろかった.
しかし,残念ながら,これらの本から共通して読み取れるテーマはソニーの没落である.(書かれた時期が時期だけに仕方ないけど)
辻井氏の本から.
上司から、面倒くさそうに、「ところで辻野さん、留学というのは、君にとっての個人的な経験だし、もう終わったことなんだから、早く忘れたら」と返されたのだ。
ソニーに足りない技術を学ぼうと息巻いて社費留学した辻井さんが帰国後なげつけられたこのフレーズは研究系にいるとよくわかる感じ.せっかく海外で留学してきたのに帰ってきたら,事務方へ異動とかよくある話.
そんで,留学前に留学後3年以内に辞めたら賠償金みたいな契約書にサインしないといけない.
つまりが会社も留学制度をご褒美程度にしか思っていないし,人に知的な投資をしたにもかかわらず,それを回収する気もないんですよね.
エンジニアやらなんやらを軽視するよくあるマネージメントです.
西田氏の本から.
どうやら、SCE側は「ディスクよりもネットワーク配信」という意識が強く、ディスク規格にはあまり興味がなかったようだ。「来るべきPS3にとって、ブルーレイ搭載は本質でない」との意見も見られた。
PS3のチームはできあがってきたものはどうであれ,ちゃんと未来を見据えていたというのが驚いた.
もったいない・・・.PS3はOSの開発がぐちゃぐちゃでえらいことになった書いてたけど・・・・やはりソフトウェアエンジニアリングがだめなのかしら.
さらに辻井氏の本から.Google TVをGoogleとソニーが発表したときのこと.
それから、七年も八年も経って、アンドロイドのようなグーグルのオープンプラットフォームを使って同じようなことをしようと発想したのだろうが、両者の決定的な違いは、今回は主導権はソニー側にはまったくないということである。
結局,ソフトウェア技術や知的財産を積み重ねることを怠った日本に今残っているものは,海外移転可能な生産技術が中心であり,それも韓国や中国に技術面を徐々に脅かされ,人件費の面では完全に競争力を失っている.
ソニーの没落におけるそういった競争力の喪失の側面と「昔はよかった」ばかりが並ぶこれらの著書は,私のような若輩者が読むと悲しみが広がる.
大学院生の頃から私は急速にソニーブランドへのかっこよさのような感情が萎えていった.その理由がこれらの著書にある.
売り上げランキング: 1,454
売り上げランキング: 5,020