[本] 文化としての近代科学
プトレマイオスの天動説から,ガリレオの地動説への発展など,西洋の科学発展の流れについての本.
プトレマイオスというと,時代遅れの天動説,ガリレオやケプラーが登場するまでのダメ理論みたいなイメージを持たれがちだが,そうではない.
プトレマイオスの天動説(地球中心説)は,その当時での計測技術や理論では十分によく検討された理論であり,科学とその当時の宗教をうまく合致させた理論であったのだ.
また,西洋と日本の文化を比較し,西洋における科学の発展が日本でも可能か,素養はあるのかをもうひとつの軸として考察している.
人類がこの世界を,考え,実験し,観察することによって如何に科学を作り上げてきたかがよくわかる.
私などは科学,数学大好きなので,虹が光の屈折で見えるとか,数学の話とかは,まさにこの世界の神秘性を表すものだと思うのだが,昔の詩人たちは,ニュートンを恨み,科学によって虹が解体されてしまったとぼやいたとか.
なかなか,おもしろい話が随所にちりばめられている.
しかし,もうひとつ,本書にちりばめられている現状の日本の研究や教育についての課題や問題点に対する提言や皮肉がちょっと本書のレベルを落としているように感じる.
単純な歴史に対する考察なのか,著者の世の中に対する不満や意見なのかが,ぼやける.
科学史をまとめていて,すごくおもしろかったので,この点で画竜点睛を欠くといったところか.(画竜点睛の使い方間違っている?)